姉御

神戸の板宿にいる姉御・Mさんの店が閉店した。
昨年末だんなさんが交通事故で入院、介護が必要だろうからやめようと思っていたところ、突然悪化して亡くなられた。
「介護の必要なくなったし、店できるねんけど、一回やめようと思ったらもうあかんねん」と閉店。
私が学生時代から多大にお世話になっていたご夫婦。中学時代のクラスメートでそのまま結婚した仲良しの二人。
震災前に長田に住んでいた頃は、よく呼び出しがかかってごはんを食べさせてもらってたし、お食事屋を始めてからも私からはお金はとれないと、いつも別メニューでごはんを食べさせてもらい、洋服を好きなの選ばせてもらっては貰って帰り(実はステージ衣装も普段着も靴も、この姉御からの頂き物が多い)、ライブに来てくれては一番こわいチェックが入る。
谷川賢作さんも「あのはっきり物言うジャンヌ・モローみたいな人」と形容していた。
とにかく目利きでセンス抜群。物には一切執着しない。ものすごく高価な着物も器も洋服も似合いそうと思うとびっくりするほどさっさとあげる。今日は店を片付けながら彼女の膨大な器コレクションから「いるやつみんな持って帰り」と紙袋を何枚も渡される。
そして今日はじめてだんなさんの慰霊の前に座った。大好きだった珈琲、ホールインワンの表彰状や葉巻、結婚当時の写真などが置かれている。
2月に亡くなられて私は4月に知った。
「なんで言ってくれなかったんですか!」
「だって、死んだって思ってないから言われへんやん」って。