呼吸

ちょいとマジメな話。ヒーリングという言葉はいつからはやってるのかわからないが(はやり出してキライな言葉になってしまったが)、まだこの言葉がはやる前、代官山でボイスヒーリング・ワークショップというのがあったのでのぞいてみたことがある。
ストレッチをした後、寝転がって「右手の上にグレープフルーツが乗ってると思ってください、そしてそれが胸のあたりを通って、お腹を通って、右足に・・・」といったある一点に神経を集中させるイメージトレーニング(これは京都芸大の声楽科必須の授業であった。声楽のレッスンはイメージ表現ばかりなのでこれは必要)。
そして長時間それをした後起き上がり、ヒーラーが「大地から声をもらいましょう」と言うと、受講生は低音域を胸式でしっかり出す。どんどん出す。「大気から声をもらいましょう」とヒーラーが中音域を出すと、これもどんどんみんな出す。そして「天から声をもらいましょう」とヒーラーが高い声を出すと、みんなHighFやGや私にはとうてい出すことのできない高音を頭声で天から声をもらえるよう手を挙げて難なく出すのだ!
私はこの光景をあっけにとられて見ていた。(たぶんこの時この音が出なかったのは私だけ)。受験生のころには五線譜の一番上の線のFもギリギリ出るか出ないか、入学して4,5年かかって6音伸びてHighDがギリギリ。えええ〜???この方法でやれば一瞬にして音域は広がったの?とビックリしながら見ていたら、受講生はポロポロと泣いている。息が全身を通った感覚が気持ちよかったのか、楽になったのか。
この光景はかなりショッキングな出来事だった。ひねくれ者の私は心底こうなれない。でもしんどい時は呼吸が浅くなってると思うし、きっと奥まで息が通って気持ちよかっただろうと思う。
・・・と、呼吸についてわずか少しの文章を書かなければいけない締め切りが今日で、何書こうか迷ってる時にこのことを思い出したのでした。でもこのことは書いてません。もしかしたら歌手という人種はヒーラーの一種かもしれません。いや、自分の呼吸だし自分のためのヒーラーなのか。