ホットミルク

kazumi-amitie2009-02-08

「何も食べられなかっただなんて・・・食べるなんて生きる基本だよ」「げっそりした顔でホットミルクくれなんて言うんだよ、どんな時でも格好つける奴が、なにがホットミルクだよ」「灰になるなんて我慢ならない、ミイラでもいいから存在していて欲しい」とマスターは食事をする度に涙を流している。
きょうは西田さんのお通夜。マスターと民俗学者の大森先生と私と3人でタクシーで有馬温泉念仏寺へ。楽しいはずの温泉地、入ると西田家ご葬儀と書かれていて3人で愕然とする。わかってはいたけど視覚に入ってきたら実感が違う。一昨年前の佐渡さんのジルヴェスタコンサートの帰り一緒にここまで車で来たよね・・・とか話していると有馬玩具博物館へ到着した。西田さんの茶目っ気たっぷりの絵や作品がいっぱい迎えてくれる。そして念仏寺へ。すごい人だ。でも奥様、博物館のスタッフ数人、東京の編集者くらいしか知り合いはいない。一匹狼だったのでどんな人たちと仕事を一緒にされていたか我々は知らない。急に西田さんが遠い人のように思える。
祭壇横の照明も西田さんの作品、その前に作りかけのおもちゃ、絵の具のパレット、筆、ハンマー、ウィンターワンダーランドの曲が流れるつくりかけのサンタさんのからくり人形オルゴールなどが置かれている。祭壇にはクルミ割り人形やお城の中にいるような人形の燭台、お供えの果物の上にも小さいおもちゃやお人形が遊んでいる。念仏寺のお坊さんが西田さんと最初に会ったとき「人形に魂入れたら人形作家は死ぬんです。禁断の果実でね」というお話をされていたらしい。
西田さんのお顔を見たあと奥様が私たちを見つけて寄ってきてくださった。「骨折は?」「そんなんどうにでもなります!!」「立って歩けてる間に木馬に行けて本当に良かった。あそこは主人の大好きな場所だったから」と奥様。「あの人、ホットミルクなんて言うんですよ、ほんとにもう・・・」とマスター。
外に出ると真っ暗な有馬に真っ白な14番目の月、ご葬儀の日は満月。