ダンディズム

有馬温泉念仏寺でからくり人形作家の西田さんのご葬儀。
やはりきょうもお寺に入りきれない人がたくさん。息子さんが3人。
「いろんなことを置き去りにして父はさぞ無念だと思う。どうぞ皆様は、健康に気を付けて長生きしてください」というご長男のご挨拶。「皆様“は”」ということばに無念さがたくさん見える。
棺が開けられお花を添えることを許されたとき、いたるところで号泣の声。マスターも泣きながら煙草を棺に入れていた。
西田さんは煙草と珈琲の人だった。ある日、あまりに西田さんの煙草がいい香りなので聞いてみると「これは勝負煙草なんですよ」と笑いながらキャラメル香の葉を見せてくれたことがあった。その缶の箱があまりにかわいいのでいただいて、私の名刺入れになっている。
西田さんが湯たんぽがいいと言うので電気あんかから湯たんぽにした。倉敷に行ったらはしまやに行ってみたら?と言われて行ってみた。名刺やプロジェクト整理術も教えてもらった。(これは私はまったく実践されていない。その日は57個のプロジェクトを進めていた)私はあまり人の影響は受けないタイプだと思うのだけど、西田さんの言うことだけはよく聞いた。


棺が運び出されたとき、西田さんの愛車真っ赤なMUSTANGが登場。運転手は西田さんの笑顔のお面をつけている。きっと玩具博物館のスタッフ。この愛車の運転席は西田さん以外の人は恐れ多いだろう。助手席には奥様。
西田さんと奥さんの初めてのデートは「男と女」の映画だったらしく、この1960年代のMUSTANGが登場する。2年ほど前アメリカでこれと同じ型の1966年製の車があることがわかり取り寄せ、奥様の誕生日にそれを横付けしたくて1年がかりで改造、修理。ほとんど高級車が買えるくらい費用はかかったらしいが間に合って誕生日の日に横付けしたらしい。(反応はイマイチだったと笑って言っておられたが・・・)
奥様には誕生日とは関係なく1年に1度、何気ないときに銀の小物をプレゼントされていた。カップルでプレゼント選ぶなんて信じられないと言っておられた。
夕方、パクさんが白洲次郎、正子の展覧会を見て木馬に来られ、「白洲次郎がおもしろいこと言ってた。ジェントルマンは“武士道”、ダンディズムは“やせ我慢”」。それを聞いたマスターが「そうそう、西田さんとダンディズムということばを辞書で引いたらやせ我慢と書いてあって、二人で大笑いした!」と思い出し笑い。
木馬には西田さんの忘れ物でしおりを挟んだ読みかけの小説がある。「この続きは僕が読む」とマスター。